研究分野
Research Field
研究领域
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金融市場における高次元モーメントリスクの波及メカニズムに関する研究
Higher Moment Risk Contagion
2008年のリーマンショックを発端とする世界金融危機、2010年ギリシャ財政問題を引き金とする欧州財務危機、及び2016年のBREXITショック等の経験を経て、個々の金融機関の健全性に止まらず、金融システム全体を不安定化させるシステミック・リスクの抑制を目的とした金融機関のリスク管理強化や政策当局のマクロプルーデンシャル規制導入が世界的な課題となっています。
リスクのスピルオーバー効果分析は金融市場におけるシステミックリスクの特定にとても重要なことで、将来発生する可能性のある金融危機の「早期警告システム」として利用されることもできるし、その動きから既存の危機の進行状況を追跡することも可能です。従来のリスク波及分析は収益率から計測される分散(ボラティリティ)のみを「リスク」として捉え、ボラティリティリスクのスピルオーバー効果を分析しました。しかし、歪度や尖度といったより高次のモーメントは市場で想定外の事象を意味するブラックスワンが出現する可能性や想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスクと関係しているため、高次のモーメントもリスクとして捉え、高次元モーメントリスクのスピルオーバー効果を研究する必要があります。
私は2020年に、Diebold and Yilmaz アプローチを拡張し、歪度スピルオーバーを推定・測定する新たな分析方法を提案しました。さらに、その分析手法を世界株式市場に応用し、株式市場における歪度波及の存在を証明しました。そして、2023年に、TVP-VARベースのDiebold and Yilmaz アプローチを拡張し、歪度スピルオーバー分析を世界商品市場に適用し、世界商品市場間の高次元モーメントリスク波及の特徴を分析しました。私の最新の研究では、高次モーメントスピルオーバーに基づいた新たなポートフォリオの構築手法を提案し、ポートフォリオの構築やリスクヘッジへの応用可能性と方法について検討しました。
研究業績
[1] He, X., & Hamori, S. (2023). Different moments create different spillovers: A study of commodity markets. The Singapore Economic Review. 1-22.
[2] He, X., & Hamori, S. (2021). Is volatility spillover enough for investor decisions? A new viewpoint from higher moments. Journal of International Money and Finance, 116, 102412.
[3] He, X., Liu, G., Hamori, S. (2021). Measuring Tail Dependencies Between ESG and Renewable Energy Stocks: A Copula Approach. In: ESG Investment in the Global Economy. SpringerBriefs in Economics(). Springer, Singapore.
[4] Zhang W, He X, & Hamori S. (2023). The impact of the COVID-19 pandemic and Russia-Ukraine war on multiscale spillovers in green finance markets: Evidence from lower and higher order moments. International Review of Financial Analysis, 102735.